おじいさんのめくれなかった日めくりカレンダーの日
天人には10月19日のまま、
めくられない日めくりカレンダーがかけてある。
それは天人の前の住人である、おじいさんがこの地を去った日
そのおじいさんは外国航路の船乗りで
天人が生まれる10年まえの1991年10月19日に
健康上の理由で親戚にひきとられていった
仲間が買ってくれた当時高級品だった「ジョニ黒」
おじいさんはもったいなくて封をきれず、大事にしていた。
この地を去るとき、
おじいさんは大家さんにある条件をつけて
その大事にしていた「ジョニ黒」をゆずった。
その条件は「俺が亡くなったら、飲んでくれ」だった。
大家さんはその約束を守り、
亡くなった知らせを聞いてから
毎年その「ジョニ黒」を少しづつ飲み、おじいさんを偲んだ。
そして月日が立ち、天人をオープンすべく手作り改装が行われたが、
大工仕事が好きなおじいさんの痕跡がいろいろ残っており、
客席の鏡のスペースはおじいさんを偲び
そのままに残された。
そんな話をきいた大家さんは
「今後は君たちが引き継ぎなさい」と
その「ジョニ黒」を店長JUNに託した。
それから、10月19日は年に一度、
静かにおじいさんを偲ぶオールナイトの日となった。
みんなで「ジョニ黒」をチビチビと分かち合い、
おじいさんを偲び、場や、人の縁に思いをめぐらす日
今後もこのお酒は弘法大師の燃え続ける火のように、
おじいさんと天人の思いをつないでいく。